東京大学新図書館構想

東大付属図書館のページを見ると、「東京大学新図書館構想」が6月末に公表されていた。
「21世紀のアカデミックコモンズ」「ハイブリッドな図書館」といった抽象的な理念が掲げられているが、それらは曖昧模糊としてつかみどころがない。そして、構想には大雑把な理念が踊るが、そもそもどうして変えるのか、何を変えるのかが判然としない。
すなわち、総合図書館(以下「総図」という。)の現在の利用状況(方法・態様)はいかなるものか、総図の従来の施設・設備にどういう問題点があったのか、各学部・大学院の学生や教員が総図に何を求めているのか、総図が提供すべき施設と各部局で提供すべき施設とをどう分担するのかといったごく基本的な諸点について、何らの説明も見解もない。
「一年半の検討を経た」というなら、最低限これらの諸点は整理しておいてしかるべきだが、アンケート等の調査をした形跡は窺えない。
また、総図に東洋文化研究所図書室の蔵書を移して、総図4階を「アジア研究図書館」(蔵書70万冊)にすることについても何ら説明がない。東文研図書室の蔵書は2010年3月31日時点で約66万冊とのことだから*1、それら全てを総図4階に移すのだろう。総図4階は、実質、東文研の図書室になるということか。
自動化書庫は、膨大な図書館資料の効率的な収納・保管や、出納業務等の負担軽減には資するだろうが、同時に、今後は、総図の書庫に入り、期せずして興味深い本に出会うという経験の機会が失われよう。図書館を「多種多様な情報が共存する森のような場」「情報と人とがさまざまな形で関係し合う場所」と表現する人がいるが*2、自動化書庫の導入により、森の中を散策して、予期せぬ興味深い情報に出会う機会が大幅に失われるということだ。