2010-01-01から1年間の記事一覧

捜査関係事項照会(刑事訴訟法第197条第2項)の解説―捜査関係事項照会と個人情報保護・守秘義務について―*1

※この記事は、刑事訴訟法第197条第2項について論じたもの。刑事訴訟法第197条第5項について簡単に触れた記事はこちら。 【この記事のまとめ】 捜査機関からの捜査関係事項照会(刑事訴訟法第197条第2項)を受けた場合、行政機関や企業には、住民・顧客等のプ…

警察官による職務質問と所持品検査(持ち物検査)

【はじめに】 「捜査関係事項照会」についてはネット上に参考になる情報(典拠を明示した情報)がほとんど無いように思います。一方、「職務質問」については、ネット上に色々と情報がありますが、間違った情報も見られます。 ここでは、職務質問と所持品検…

排除法則における「違法の重大性」の考慮要素

ちょうど1年前に出た最決平21・9・28*1に、理解し難い箇所があります。 本決定は、当該事案におけるエックス線検査を無令状検証であって違法であるとしつつ、これと関連性を有する覚せい剤については違法収集証拠としての証拠排除を否定しました。本決定は、…

証拠物に対する捜査官の作為等の違法捜査は、いかにして抑止しうるか(9月28日追記)

(1)証拠物に対する捜査官の作為 木谷明先生が、他の裁判官から聞いた話として、ある事件を紹介されていたことを思い出しました*1。それは、覚せい剤所持の事案で、覚せい剤の入った、被告人のものではない財布の中に、警察官が事後的に被告人の住所録を差…

訴訟能力

下の記事に追記した際に、見つけたもの。 波多野陽さんが、「知的障害者 裁く難しさ」という記事をお書きになっています。 asahi.com:知的障害者 裁く難しさ-マイタウン佐賀 公選法違反事件の被告人は、弁護人との応答からみて、弁護人と裁判官の区別が付い…

宿泊を伴う取調べ

奈良市歌姫町の殺人被疑事件に関して、被疑者男性の勾留請求認容の裁判に対する準抗告審で、原裁判が取り消されたという記事*1、*2がありました。その件について、先日ここに雑文を書き、その後、事件の続報を読んで加筆しました。 今日、その文章を編集しよ…

捜査関係事項照会(11月16日に修正)

「捜査関係事項照会と個人情報保護・守秘義務」については、こちら。 秋田県警の警部補が、自分の妻に携帯メールを送信した人物を特定するため、虚偽の捜査関係書類を用いて、携帯電話会社にメール送信者の個人情報を照会したことで、虚偽有印公文書作成・同…

「人権の衝突 - おおやにき」

人権の衝突 - おおやにき http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000672.html 大屋雄裕准教授は、「LRAは(芦部説では)経済的自由に適用されるべき基準であることに注意」と仰います。 しかし、ここには誤解があるように思います。芦部信喜先生は…

鯉と鯛

刑法作者: 山口厚出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2005/10メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 53回この商品を含むブログ (35件) を見る本書(平成21年11月・初版第8刷)の358頁には、器物損壊罪における「損壊」概念に関して、「鯉・海老が描かれた掛け軸…

改めて採尿

陸上自衛隊の陸曹が覚せい剤使用の被疑事実で逮捕されたそうです。尿に関する鑑定書等の証拠能力の点で、陸自の警務隊が改めて尿検査したのは適切な判断だったのではないかと思います。 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100625-OYT1T01048.htm こ…

富士通の「元裁判官の社外監査役」

6月18日の朝日新聞15面(経済面)に、「「日本型」統治 岐路に」と題する記事がありました。五十嵐大介さんと五郎丸健一さんの記名記事です。「富士通、セイコーHD…相次ぐ機能不全」とありますが、具体例として取り上げられているのがこの2社だけなので、…

アルマ『民事訴訟法』

民事訴訟法 (有斐閣アルマ)作者: 山本弘,松下淳一,長谷部由起子出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2009/03メディア: 単行本 クリック: 30回この商品を含むブログ (8件) を見る初刷りに見られる誤りの一部を挙げます。 42頁の「規79条」は誤りで、正しくは「規8…

被疑事実と犯罪事実

刑訴法200条1項には「被疑事実」という言葉が用いられている。刑訴法において「被疑事実」が用いられているのはこの1度だけで、他の条文は、199条3項も203条1項も「犯罪事実」を用いている。どうしてだろう。

法律学における「合理性」

今日は法律学における「合理性」概念について少し考えてみましたが、結局のところ、よく分かりませんでした。「合理性」概念が用いられている「憲法判例」をみつくろい、以下に紹介します。それぞれの「合理性」「合理的」の語がいかなる意味で用いられてい…

木村先生のご論文を拝読しました(6月17日に加筆・修正)

木村草太「無限に連なる3LDK(75m2)――選択肢の不可視化とソフトロー」(以下「本論文」という。)を読みました。本論文の感想や、少し調べてみて考えたことを書きます。(1) まず、本論文の内容を要約します。 「緒言」では、本論文の構成が説明されていま…

『基本講義債権各論II 不法行為法 第2版』

基本講義 債権各論〈2〉不法行為法 (ライブラリ法学基本講義)作者: 潮見佳男出版社/メーカー: 新世社発売日: 2009/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 26回この商品を含むブログ (5件) を見る169頁で「最高裁は、さらに、この受忍限度論を、日照妨害…

『民事裁判入門 第3版』

民事裁判入門 第3版作者: 中野貞一郎出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2010/04/14メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 8回この商品を含むブログ (2件) を見る7頁の〔M2〕の「業務上過失傷害事件」は誤りで、正しくは「自動車運転過失傷害事件」です…

shin422さん

数ヶ月前にshin422さんの日記の存在を知りました。頭脳の明晰さや知識の該博さに感心します。 http://d.hatena.ne.jp/shin422/ (6月20日追記) 上のURLを貼ったことで自分がトラックバックを送っていたということに気が付きました。6月12日の時点では、はて…