芦部憲法第5版

憲法 第五版

憲法 第五版

手に取ってみた。芦部憲法5版では、芦部憲法の審査基準論と近時隆盛しつつあるらしい比例原則の関係について1頁にわたって、高橋教授の見解が開陳されている。比例原則に対する理解と評価は高橋教授の曹時論文の延長線上にあり、一つの立場を示唆している。この理解と評価に対しては異論があるところであろうが、私にはよく分からない。
広島市暴走族追放条例事件に関する加筆部分で、高橋教授は「広汎・不明確ではないかが問題とされた」と指摘されているが(200頁)、最高裁では概ね広汎性だけが問題とされたこと、各個別意見もその点を巡って議論されていることに注意したい。


さておき、芦部憲法はよく読んだ方が良い。たとえば、職業選択の自由に関して規制目的二分論だけが論じられているわけではない。薬局距離制限事件の解説(『憲法判例百選(第5版)1』)で石川健治教授が指摘される「ドイツ憲法判例における段階理論(Stufentheorie)」の考え方については、芦部憲法でも本文で触れられている。もっとも、「段階」理論自体については、たとえば覚道豊治教授が『ドイツ判例百選』(1969年)で、宮崎良夫教授が『昭和50年度重要判例解説』(1976年)で夙に指摘されていたところであるが。


芦部憲法は、日本国憲法を参照しつつ、国会議員も記者も当然読んでいて欲しい。
2009年12月、習近平氏が天皇陛下に謁見した一件で、小沢一郎氏は当初の記者会見で、質問をした共同通信の記者に対して「君は日本国憲法を読んでるかね」と逆質問したうえ、「国事行為は内閣の助言と承認で行われるんだよ」と述べた。読んでいるのかいないのか、記者は返答も反論もしなかったようである。小沢氏は「国事行為」とする見解をその後修正していたが。小沢氏は国会議員にも支援者が多数いるが、初歩の憲法知識について、事前に打ち合わせ、レクチャーできる支援者は存在しないのだろうか、ということが不思議であった。